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中学2年から不登校、高校も1ヶ月で中退後、塾も予備校も行かず全くの独学で大検から東大理Ⅲに行った私が、独自に編み出した独習法を伝授します。

カテゴリ:大学受験 > 高校理科

cylmodes
音源はいくつかのパターンに分類されます。音叉もまた、いろいろな鳴り方があります。
mode0
無指向性の音源のシュミレーション音源(上図一番左)が2次平面上に作る波です。
密度で考えると左右に同位相の波を作ることがわかります。
mode1
音叉の異常モード(同位相モード)のシュミレーション音源(上図左から2番目)が2次平面上に作る波です。
これは大阪大学が出題ミスをしたときに最初に想定した答を正当化するために利用した波の作り方です。
密度で考えると左右で逆位相の波を作ることがわかります。
mode2
音叉の正常モード(逆位相モード)のシュミレーション音源(上図左から3番目)が2次平面上に作る波です。
これは大阪大学が後でしぶしぶ追加した本来正しい答の波の作り方です。
密度で考えると左右に同位相の波を作ることがわかります。
つまり、左右だけで考えると音叉の正常モードは無指向性の音源と同様と考えてよいことになります。

さて、密度で左右で同位相ということは音叉の左腕が左に変移したとき、右腕は右に変移します。左腕のすぐ左にあった空気分子は腕に押されて左に変移します。右腕のすぐ右にあった空気分子は腕に押されて右に変移します。変移はベクトルで方向を考えないといけません。ここで右を正方向とすると音叉の左の変移はマイナス、音叉の右の変移はプラスとなります。このため「変移は逆位相になる」と表現します。ところがこれを密度で考えると左右にに空気密度の高いエリアをつくります。このため「密度は同位相になる」と表現します。
表現上の違いはあれでも同じ物理現象を表しているのでどちらで考えても同じ答がでます。
ここらへんは高校物理の本に詳しく載っています。
最大のポイントは右を正に定めたら、Δxが右に変位したときにy軸はプラスとし、Δxが左に変位したときにy軸はマイナスになるということです。このため、音叉が左右で密度波で同位相の時、変位では逆位相になります。

大阪大物理1-2
音叉が正常モードで2d=nλが正解であるアニメを作りました。ここでは密度波で考えていますので、音叉の左右で同位相、壁の反射は自由端で同位相です。これよりマイクが音叉より左にあるときは定常波となり強め合うのは場所によりますが、右にある条件では常に強め会うことが理解できます。
大阪大物理2-2
音叉が正常モードで2d=nλが正解であるアニメを作りました。ここでは位相波で考えていますので、音叉の左右で逆位相、壁の反射は固定端で逆位相です。これよりマイクが音叉より左にあるときは定常波となり強め合うのは場所によりますが、右にある条件では常に強め会うことが理解できます。
(証明)
x=0にある音源の時間tでの反対側(Q点)のx軸方向の変位yは
  y=A・sin2π(t/T) ①
と書ける。
①のx=xでの変位はx/v秒かかるのでt=t-x/vを代入して
  y=A・sin2π{(t-x/v)/T}=A・sin2π(t/T-x/λ) ②
となる。また、変位は音源の左右で逆で変位波は逆位相のため、壁側のx軸方向の変位yは
  y=-A・sin2π(t/T) ③
と書ける。
②のx=xでの変位は、変位波では壁は固定端で位相がπずれて、さらに(2L+x)/v秒かかるのでt=t-(2L+x)/vを代入して
  y=-A・sin2π{(t-(2L+x)/v)/T+π}
   =A・sin2π(t/T-x/λ-2L/λ) ④
壁と音源の間につくる定常波は③と④の波の合成波であるので
  y=-A・sin2π(t/T)+A・sin2π(t/T-x/λ-2L/λ)
   =2A・cos2π(t/T-2L/λ)・sin2π(x/2λ+L/λ) 
ここで今回の設定L=-2λを代入すると
  y=2A・cos2π(t/T)・sin2π(x/2λ)
となり、壁の位置x=-2λや音叉の位置x=0、その中間点x=-λでは0となりますがその他の位置で常に0なわけではありません。
合成波の変位が0となる位置では変位感知マイクは音を拾いません。

この2枚のアニメからマイクロフォンが圧感知型(←人の耳もこれ)でも変位感知型でも音叉の右側では強く聞こえますが、音叉の右側では様子が違います。
例えば壁の位置では、圧感知型では大きく聞こえますが、変位感知型では小さく聞こえます。
大阪大学の問題はマイクの位置は音叉の右だとはっきり書いてありますので問題なかったのですが、京都大学の問題はあいまいだったため不備を指摘されました。

2018年02月01日
平成29年度京都大学一般入試 理科(物理)における入試ミスについて
公表にあたって
このたび、平成29年2月に実施いたしました、平成29年度一般入試 理科(物理)の問題に出題ミスがあることが判明いたしましたので、下記のとおり公表します。受験者の皆様をはじめ関係の皆様に多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを心よりお詫び申し上げます。この事実を厳粛に受け止め、深く反省するとともに、影響を受けた受験者への対応と再発防止に全力で取り組んでまいります。
入試ミスの内容
該当する問題:物理問題Ⅲ(4)「せ」(別紙2参照) 配点3点
ミスの内容:問題文中に条件設定が不足していたため、正解が一つに定まらない設問となっていた。
別紙2 入試問題 理科問題(抄)
別紙3 平成29年度京都大学一般入試における物理問題 III (4)の解説

大阪大学に続いて京都大学も入試ミスを公表しました。河合塾,SEGなどで物理を教えている吉田弘幸さんが問題を直接大学に指摘したそうです。以下、京都大学が発表した解説の一部です。

以下では、まず本問題における基本事項である、音波、音源、壁での反射、観測する量、観測する位置について検討したのちに、問題を解説する。

基本事項
観測する量について

音波は二種類の変化(圧力変化と変位)が互いに影響を及ぼし合いながら、空間を伝わってゆく波なので、その観測も圧力変化を検出する方法と変位を検出する方法に分類することができる。ヒトの聴覚系は耳の鼓膜で圧力変化を検出していることが知られている。これは、鼓膜の後ろが閉鎖されている構造を持つことに起因している。また、多くのマイクロフォンも後ろが閉鎖された構造を持ち、圧力変化を検出している。しかし、マイクロフォンには、変位(速度) を検出するタイプのものも存在する。このようなマイクロフォンは耳とは異なり、後方が開放された構造をもっている。
本問題においては、「運転手が音を聞く」という動作が記述されている。従って、耳の動作原理を理解している解答者が、「音波の強弱は圧力変化の大小を意味している」と考えることは自然である。ただし、問題文にある「音波は強め合ったり弱めあったり」という表現だけでは、圧力変化あるいは変位のいずれの強弱を指しているかは不明瞭である。
観測者の位置について
問題では、音源と観測者は同一地点、より正確にいえば、波長にくらべて隔たりが十分に小さいことを想定している。図3 に音源近傍での音波の様子を示す。観測者は点線の枠の中にいて、その中であればどこでも反射波の振動の位相は同じである。
反射波と直接波の干渉効果を圧力変化で観測した場合は、壁で反射してきた反射波の圧力変化の振動の位相と、音源付近の直接波の圧力変化の振動の位相を比較することになる。この場合は、図3(a) からわかるように、観測者(運転手)と音源の相対位置は関係ない。観測者がPにいようが、Qにいようが同じ位相差の干渉効果を与える。
一方、反射波と直接波の干渉効果を変位で観測した場合は、壁で反射してきた反射波の変位の振動の位相と音源付近の直接波の変位の振動の位相を比較することになる。図3(b) に示すように、波源からの直接波の変位の振動方向は、波源の近くであっても、観測点と波源の位置関係によって変わる。観測点が壁側(P)の場合と、逆側(Q)にあるときでは位相が逆であり、一方が強め合う干渉の場合は他方は弱め合う干渉となる。
図3
本問題の解法
運転手が変位を観測している場合

運転手が音波を変位で観測している場合も考えてみよう。干渉効果を変位で考えることにする。壁での反射による位相変化は π である。圧力変化の場合との大きな違いは、直接波の変位の向きが音源の周りで放射状になっていることである。この効果を式 (1) に加える必要がある。
ここでは、最も簡単な 2 つの場合を考える。
運転手が音源の壁側(図3 (b) の P)で音波の干渉を観測しているとすると、直接波の位相に付加的な効果を考える必要はない。壁での反射による位相変化 π を考慮し、反射波と直接波が弱め合う条件 ∆ϕ = π(2n + 1) を適用すると、
L =λ/2・(n + 1)   (4)
が得られる。ここで n = 0, 1, 2, . . . である。

「音波」も「音源」も「壁での反射」も問題はありません。
「観測する位置」と「観測する量」に問題がありました。

運転手が音源に対して壁の反対側(Q点)にいれば問題ありません。

これなら大阪大学の問題と同じです。このとき、入射波と反射波は同じ方向に進むので、音源と壁の位置関係を2L=(n+1)λにとると完全に波は一致します。運転手は壁の反対側にいる限りどこにいても構いませんし、耳が観測するのは変位でも圧力でも同じです。弱め合うのが答なら当然2L=(n+1/2)λとなります。今までの入試問題から考えても京都大学は「運転手は音源に対して壁と反対側(図3 (b) の Q)にいるものとする」と書くべきでした。

運転手が音源の壁側(P点)にいるときが問題なのです!

基本事項
定常波について

運転手が音源の壁側(P点)にいるときは、2つの進行波は逆方向に進みます。そして速度・速さが等しく、向きが逆の2つの進行波が重なると定常波を作ります。(下図)
変位波では、変位が0となる場所を節、変位が最大となる場所を腹といいます。
圧力波では、圧力変化が最小となる場所を節、圧力変化が最大となる場所を腹といいます。
変位波の節と圧力波の腹、変位波の腹と圧力波の節の場所はそれぞれ一致します。
定常波の腹~腹、節~節間の距離はλ/2、腹~節間の距離はλ/4です。
音の壁での反射は、変位波では節⇔位相がπずれる⇔固定端反射となります。
音の壁での反射は、圧力波では腹⇔位相がずれない⇔自由端のような反射となります。(注1)

解法1.変位波で考える
1)運転手の耳は圧力を観測すると仮定します。
運転手は音を弱く聞くのですから、圧力変化最小=変位最大の場所、つまり変位波の定常波の腹にいます。
変位波では壁で節となりますので、Lは腹~節間となります。
よって、L=1/2・nλ+1/4・λ、つまり2L=(n+1/2)λとなります。
2)運転手の耳は変位を観測すると仮定します。
運転手は音を弱く聞くのですから、変位が0の場所、つまり変位波の定常波の節にいます。
変位波では壁で節となりますので、Lは節~節間となります。
よって、L=1/2・nλ、つまり2L=(n+1)λとなります。

解法2.圧力波で考える
圧力波で考えても結果は同じです。
1)運転手の耳は圧力を観測すると仮定します。
運転手は音を弱く聞くのですから、圧力変化最小の場所、つまり圧力波の節にいます。
圧力波では壁で腹となりますので、Lは節~腹間となります。
よって、L=1/2・nλ+1/4・λ、つまり2L=(n+1/2)λとなります。
2)運転手の耳は変位を観測すると仮定します。
運転手は音を弱く聞くのですから、変位が0=圧力変化が最大の場所、つまり圧力波の腹にいます。
圧力波では壁で腹となりますので、Lは腹~腹間となります。
よって、L=1/2・nλ、つまり2L=(n+1)λとなります。

定常波のできるようす
(三省堂 高校学校 物理Ⅰ p.70)

(注1)厳密には固定端、自由端は変位波の時の用語ですので、圧力波で壁の反射で位相がずれないことを「自由端のような」と表記しました。

〔補遺〕 波の式で考える

運転手が音源の壁側にいるときの定常波の様子を変位波と圧力波の2つの式を使って検証します。

解法3.変位波の式で考える
x=0にある音源の時間tでの反対側(Q点)のx軸方向の変位yは
  y=A・sin2π(t/T) ①
と書ける。
①のx=xでの変位はx/v秒かかるのでt=t-x/vを代入して
  y=A・sin2π{(t-x/v)/T}=A・sin2π(t/T-x/λ) ②
となる。また、変位は音源の左右で逆で変位波は逆位相のため、壁側(P点)のx軸方向の変位yは
  y=-A・sin2π(t/T) ③
と書ける。
②のx=xでの変位は、変位波では壁は固定端で位相がπずれて、さらに(2L+x)/v秒かかるのでt=t-(2L+x)/vを代入して
  y=-A・sin2π{(t-(2L+x)/v)/T+π}
   =A・sin2π(t/T-x/λ-2L/λ) ④
運転手が音源に対して壁の反対側(Q点)にいるとき
②と④が強めあうためには
  2L/λ=n+1 (n=0,1,2・・・)
よって2L=(n+1/2)λで弱めあう。
運転手が音源の壁側(P点)にいるとき
壁と音源の間につくる定常波は③と④の波の合成波であるので
  y=-A・sin2π(t/T)+A・sin2π(t/T-x/λ-2L/λ)
   =2A・cos2π(t/T-2L/λ)・sin2π(x/2λ+L/λ)  ⑤
x=0のとき変位の振幅は2A・sin(2π・L/λ)となる。
1)運転手の耳は圧力を観測すると仮定する
運転手は音を弱く聞くから、圧力の振幅最小=変位の振幅最大の場所にいる。
よって、2π・L/λ=(n+1/2)π、つまり2L=(n+1/2)λとなる。
2)運転手の耳は変位を観測すると仮定する
運転手は音を弱く聞くから、変位の振幅最小の場所にいる。
よって、2π・L/λ=(n+1)π、つまり2L=(n+1)λとなる。

解法4.圧力波の式で考える
x=0にある音源の時間tでの反対側(Q点)のx軸方向の変位yは
  y=B・sin2π(t/T) ①
と書ける。
①のx=xでの変位はx/v秒かかるのでt=t-x/vを代入して
  y=B・sin2π{(t-x/v)/T}=B・sin2π(t/T-x/λ) ②
となる。また、圧は音源の左右で等しく圧力波は同位相なので、壁側(P点)のx軸方向の変位yは
  y=B・sin2π(t/T) ③
と書ける。
②のx=xでの変位は、圧力波では壁は自由端相当で位相がずれず、さらに(2L+x)/v秒かかるのでt=t-(2L+x)/vを代入して
  y=B・sin2π{(t-(2L+x)/v)/T}
   =B・sin2π(t/T-x/λ-2L/λ) ④
運転手が音源に対して壁の反対側(Q点)にいるとき
②と④が強めあうためには
  2L/λ=n+1 (n=0,1,2・・・)
よって2L=(n+1/2)λで弱めあう。
運転手が音源の壁側(P点)にいるとき
壁と音源の間につくる定常波は③と④の波の合成波であるので
  y=B・sin2π(t/T)+B・sin2π(t/T-x/λ-2L/λ)
   =2B・sin2π(t/T-2L/λ)・cos2π(x/2λ+L/λ)  ⑤
x=0のとき圧力の振幅は2B・cos(2π・L/λ)となる。
1)運転手の耳は圧力を観測すると仮定する
運転手は音を弱く聞くから、圧力の振幅最小の場所にいる。
よって、2π・L/λ=(n+1/2)π、つまり2L=(n+1/2)λとなる。
2)運転手の耳は変位を観測すると仮定する
運転手は音を弱く聞くから、変位の振幅最小=圧力の振幅最大の場所にいる。
よって、2π・L/λ=(n+1)π、つまり2L=(n+1)λとなる。

まとめ
京大の発表した解説のまとめの部分です。
まとめ
音波に関する問題を考える際には、媒質である空気の圧力変化と変位の振動が互いに影響を及ぼし合いながら空間を伝わることを正しく認識する必要がある。
等方的な波を出す点音源を考え、観測者が音源の近くで圧力変化を観測する場合は、観測者と音源の位置関係によらず、一意的に干渉条件が導かれる。一方、変位として音波を観測する場合、観測者と音源の位置関係を特定しない限り問題が不定になる。
高校の物理の教科書では、壁での音波の反射を変位で議論することが多い。これにつられて、検出装置を考えないまま音波の観測は変位の観測によるものだと安易に決めつけてしまう可能性がある。そのため、音の干渉を扱う問題では、音波の検知方法に関する注意深い記述が必要である。
本問題においては、「運転手が音を聞く」という観測動作が記述されている。耳が変位を検知していると仮定すると、固定端である壁に近づくと、音は聞こえなくなるはずである。経験上そういった現象は観測されないので、変位を観測しているとは考えにくい。しかし、耳が圧力を検知していることを前提知識としないのであれば、問題文の「音波は強め合ったり弱めあったり」の意味を明らかにするために、音波の検知方法を明記する必要があった。

京都大学は発表した解説のまとめの中で、
『耳が変位を検知していると仮定すると、固定端である壁に近づくと、音は聞こえなくなるはずである。経験上そういった現象は観測されないので、変位を観測しているとは考えにくい。』
といっています。
たしかに耳は変位でなく圧力を検知しているのかも知れませんが、それを経験上の根拠で結論づけていいのでしょうか? それに、実際そのような経験をした人は少ないでしょう。普通、人が壁に耳を近づけるのは室内の音を聞くときではなく、隣の部屋の音を聞くときだからです。
しかも、もしこの論法が正しいのなら、
『耳が圧力を検知していると仮定すると、共鳴している音源に近づくと、音は聞こえなくなるはずである。経験上そういった現象は観測されないので、圧を観測しているとは考えにくい。』
とも言えてしまうでしょう。
問題設定にも無理がありそうです。音源が『等方的な音波を出す点波源』なら、長い距離を行く間に拡散し減衰してしまいます。音源のすぐ横にいる運転手には音源の直接音しか聞こえないでしょう。経験上、山びこを聞きたかったら、大声を出した後静かにしていなければいけません。

もとい、経験の話は止めましょう。物理は経験より実験に基づいた事実の積み重ねですから。
今回も実験をしていればこのような出題ミスも避けられたでしょう。

2018年1月6日(土)
『このたび、本学において、平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点に誤りがあったことが判明いたしました。そのため、改めて採点及び合格者判定を行い、新たに30名を合格者としました。』

河合塾,SEGなどで物理を教えている吉田弘幸さんが問題を直接大学に指摘したそうです。そして、大阪大学自身が理科問題(物理) 〔3〕Aの解説(1月12日追記)を出しました。

『2 節でみてきたように、音叉には複数の振動モードがある。逆位相振動モードのときの正答は、2d = nλ または2d = (n+􀀀1)λ 、同位相振動モードのときの正答は、2d =(n+1/2)λ である。
A-I. では逆位相振動モードを設定していた。A-III. の問4では振動モードを特定していなかった。しかし、問5においては同位相振動モードで振動していることを前提として問題が作られていた。A-I. を踏まえて問4を逆位相振動モードで考える受験生もいれば、問5の設問内容から問4を同位相振動モードで考える受験生もいたと思われる。よって、三つの解答に対しいずれも満点(3 点) を与えた。』

2d=nλが正しいのはわかりますが、どうして2d=(n+1/2)λも正しいのでしょうか?
大学側の説明は「2 節でみてきたように」と書いてあるので2節を良く読むといくつかの疑問が湧きます。

(疑問1)
Russell, D. A.によるWeb ページ(そのGoogle翻訳による日本語版)によると、」としたうえで「音叉を一つ定めたとき、同位相振動モードおよび逆位相振動モードはどちらもその音叉に対して可能な振動モードであるが、一般にそれぞれ異なる振動数の音波を発生する。問題Aの前文に、音叉は常に決まった振動数の音を発することが明示されているため、問題の前提条件としてはどちらかのモードのみで振動していると考える。」としている。
裏をとるためにそのWebページを見てみると、他にもたくさんのモードがあり、「どちらかのモードのみで振動している」とは言えません。音叉の叩き方が悪かったために鳴る異常振動まで考えたら、他にもいろんなモードを想定しなくてはいけなくなります。どちらか2つに定めることには無理があるのではないでしょうか?

(疑問2)
「1 問題
平成29 年度大阪大学一般入試(前期日程) 等における理科問題8 ページから10 ページ
A. 音叉(おんさ)を音源として用いる実験で,空気中の音速を求めてみよう。使用する音叉は,振動数500 Hz の音を,必要なだけ長い時間にわたって発し続けるとする。
A-I. 気体中の音波は縦波であり,圧力の高い状態(密)と低い状態(疎)を繰り返すことから疎密波ともよばれる。音叉は,2本の平行な腕を持つU字型の金属製道具であり,楽器の調律などに使用される。腕の部分をたたくと,ある特定の振動数の音だけを発する。図1は,振動している音叉を上から見た状況を示している。矢印は,ある瞬間に音叉の腕が動いている向きを表している。音叉が音を発するときは,このように2本の腕は互いに逆向きに振動し,周囲の空気に圧力変動を与えている。」
A-I.の問題文中には図も入れて書いて音叉が逆位相モードで音を出すとはっきり書いてあります。
大阪大学はA. 以下に書かれていることはA-I. A-II. A-III. に及ぶが、A-I. 以下に書かれていることはA-I. だけに限局し、A-II. A-III. には及ばないと言っています。
しかし、A-I. 以下の問題文(下線部)は、文章の内容から判断して、音波や音叉の一般的な性質を述べた文章であり、ただA-I.の問題を解くためのだけの条件設定文とは取られません。したがってこの内容は問題A. 全体に及ぶと考えられるのではないでしょうか?

(疑問3)
大阪大学のいう「同位相振動モード」はWebでは「非対称モード(面内曲げ)」と紹介されています。
「非対称モード(面内曲げ)
よく知られている対称的な基本モードおよびクランモードに加えて、音叉は、クランプフリーのソリッドバーの振動モードと同様に、面内曲げモードのファミリを示すことができます。別々のクランプフリーバーとして振動する代わりに、フォーク全体が1つのオブジェクトとして振動します。右のアニメーションは音叉の最初の3つの固定されていないモード形状を示しています。周波数は(左から右へ)385Hz、2171Hz、および4772Hzです。これらのモードのうちの最初のモードは、基本モードの周波数426Hzよりも低い周波数を有することに留意されたい。」
調律で使うために振動数500 Hz 用に作られた音叉は音叉に500 Hz と刻印があります。正しく叩くと500 Hz で鳴りますが、叩き方が悪いとそれより低い音がでます。その周波数は普通わからないので実験には使いません。Russellさんが調べたところ426Hz用に作られた音叉が異常音で鳴るときは385Hzだったそうです。500 Hz の音叉が非対称モード(面内曲げ)で何Hzで鳴るのかわかりません。
周波数のわからない音源を音速の測定の実験に通常用いないのではないでしょうか?

(疑問4)
A.以下の問題文中に 「使用する音叉は,振動数500 Hz の音を,必要なだけ長い時間にわたって発し続けるとする。」とあります。このことはA-I. A-II. A-III. に及ぶことは大阪大学も認めています。
もし、Russellさんのように音叉に熟知した受験生だったとしても、この文章から音叉は基本モード(逆位相モード)で振動していると判断されます。
音叉は左右の腕が逆に動くから柄に振動が伝わらず、長く鳴ることができます。左右の腕が同方向に動く場合は柄に振動が伝わるのですぐに減衰してしまうことは音叉をさわった人なら誰でも知っています。Russellさんも「別々のクランプフリーバーとして振動する代わりに、フォーク全体が1つのオブジェクトとして振動します。」と言っています。この音が減衰する同位相モードは問題文中の「長い時間にわたって発し続ける」の記述と矛盾するのではないでしょうか?

音叉を叩くとき、叩き方が悪いときれいなポーンという音がせずビーンと鳴り、柄に振動が伝わり早く音が小さくなるので、実験者は普通叩き直します。それを500 Hzだと思ってそのまま実験を強行したら音速は正確に計れません。

(結論)
大阪大学は間違ったのではなく(一部認めた)、もともとそのように想定して問題を作ったのだといい、そのため音叉の誤った使用法を正しい使用法として問題を解説しました。
高校の教科書にも音叉は腕も左右に逆に振動する正しい鳴り方が図入りで書いてありますが、それを参考にせず、音叉の異常な振動モードを列挙したサイトを挙げ、それを都合良く解釈して問題を作ったとしたらその問題自体が不適切ではないでしょうか?

少なくとも受験生はこの問題に惑わされず、音叉の問題が出たら従来通り教科書通り、左右の腕は逆位相で動くと考えましょう。
おんさからの音波の発生
(三省堂 高等学校 物理Ⅰ p.83)

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